抗原定性検査キットの話
1 50歳以上、もしくは5歳以下
2 酸素飽和度 95 以下
3 重症化リスクあり (呼吸器疾患など)
を指します。県は、上記以外の方については有症状であれば抗原定性検査キットを配布し、陽性ならば自主的に療養してね、というやりかたで医療ひっ迫を防ぐ方針です。
さて、この抗原定性検査キット、「+なら陽性が確定するが、-では陰性が確定するわけではない。一部陽性の可能性が入り込むため」ということなのですが、どういうことなのかその理由について考えてみましょう。 その前に、感度と特異度について簡単に説明しましょう。 感度とは「陽性の人を陽性と診断できる確率」、特異度とは「陰性の人を陰性と診断できる確率」、となります。
表にすると以下のようになります。 一見、陽性の「感度」が高ければ性能が高いように思えますが…
コロナ陽性 | コロナ陰性 | |
キットで陽性 | 感度 | |
キットで陰性 | 特異度 |
どこで線引きしたらいいでしょうか? 線を引くとなると以下のような3か所が考えられます。 a,b,cです。
結論からいうと、現在ある抗原検査キットはbで線引きされております。このb線の右側を陰性、左側を陽性と設計されております。では、b線にはどんな意味があるのでしょうか。まず、b線の右側を見てみると陰性がすべて含まれていてさらに陽性の一部も含まれています。言葉に直すと「-に出た場合、陰性をすべて含むだけでなく、陽性の一部も含むので、すべて陰性とは言えない」となります。先ほどの「特異度」を使えば100%陰性をキャッチしているので特異度100%、ということになります。次にb線の左側を見ると陽性しかありません。言葉に直すと「+に出た場合、陽性が確定します。」となります。まとめると、「+に出れば陽性が確定しますが、-に出た場合、陽性の場合もありうるので陰性は確定できません」となります。抗原検査キットの目的は「+にでれば陽性が確定する」ことを重視しているのです。最近、「陰性証明」を要求する会社があるようですが、このように設計された検査キットではそれはできないことがわかると思います。
では、c線に設定したらどうなるでしょう?
上とは逆ですから「-にでれば陰性が確定するが、+の場合、陰性が一部含まれている可能性があるので注意が必要」ということですね。これって、陰性証明に使えますね。どうしても陰性証明がほしければ検査キット会社にお願いして「感度100%」の検査キットを作ってもらえばいいのです。-なら陰性が確定するのですから。でも、これで陰性になっても出社時に通勤でコロナにかかったら意味ないですけどね・・・
最後にa線。以上から、この線は中途半端な位置づけになるので、「確定させること」を考えると利用価値が低いのがわかります。ただし、陽性陰性の重なり部分が少ない時はこちらのほうが優れていますね。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11331.html
上の厚労省のホームページには認可された抗原検査キットの概要が書かれておりますのでご参考までに。ほとんどが特異度100%に近くなるよう設計されているのがわかります。55個もあるんですね。
2022.8.1
4回目の接種について
コロナは最近急激にBA.5に置き換わってきております。政府も4回目の接種を進めるよう躍起となっております。しかし、4回目を打ってもどのくらい効果が期待できるのかという懐疑的な考えもあります。(私も当初、そう考えておりました)
今回、コロナに感染した患者さんの後遺症を経験しました。 30代と40代の看護師さんと保育士さんです。2名とも3回目のワクチンを打った後にコロナに感染しました。(BA.5の可能性が高い) その後遺症ですが主訴は「記憶障害」なのです。朝、皆でミーティングをして取り決めたことを午前中にすっかり忘れ、同僚に指摘されないと気づかす、仕事にならないようです。2名ともそれぞれの職場で同様です。これ以外にも「だるさ」、「頭痛」、「不安」が続いています。 なお、MRIでは脳に異常はないようです。
これらの症例からコロナは単なる風邪ではない、という考え方も否定できません。BA.5は感染力が強いものの、全体的には症状はかなり軽くなってきており、重症者も少ないですが、軽症者が簡単に治るような特効薬(インフルエンザに対するタミフルなど)がない以上、ワクチンが最大の武器になります。 4回目を打てば記憶障害が起きないと確約できませんが、少なくとも重症度は抑えられるでしょう。 このような症例に接すると少しでも可能性のあることは実行したほうがいいと実感します。
最近発表されたカナダの報告も重症度を下げる結果が出ており、4回目の接種を勧めるという結果になっております。
BMJ (Clinical research ed.). 2022 07 06;378;e071502. doi: 10.1136/bmj-2022-071502.
また、新たにBA2の亜系のBA2.75が出現していて、現在のBA5より感染力が強い可能性が高くWHOは注視しています。
2022.7.25